認知症高齢者の“終末期ケア”
 
  日本の高齢社会において、加齢とともに増加する認知症を併発しながら死を迎える高齢者も増えている中で、認知症高齢者の終末期ケアは、医療機関に限らず、在宅や介護施設でも取り組みが広がっている。

しかし、認知症高齢者の終末期ケアでいう、「終末期」の基準についての合意が形成されておらず、広く認められた基準がない現状だ。
実際の現場では、終末期ケアについて認知症高齢者本人の意思が確認できないケースも多く、どう対応していけばよいのだろうか?

  高齢者介護  
 
認知症高齢者の終末期ケアをどう考える!?
認知症ケア   人は老いを避けることができないように死を避けることができません。そして多くの人は老いて病んで死を迎えます。この「老いて死ぬこと」は自然な姿であり、医療の分野でも改めて取り上げられるようになったのは比較的最近のことです。

高齢者の実に80%以上の人が病院で死を迎えています。しかし、医療技術の進歩で高齢者の延命も可能となり医療が高齢者の死をもコントロールしています。
他方、少なくなったとはいえ在宅や介護施設での高

 
齢者の終末期医療あるいは終末期ケアが取り組まれています。終末期医療は死にいたるまで人生最期の“生への医療”です。また、終末期ケアあるいはターミナルケアは、終末期医療を含む用語で、欧米では「エンド・オブ・ライフケア」という用語を用いることが多くなっています。
 
そこで今回は“終末期ケアの対応”を2回に分けてご紹介していきます。

今回は、【終末期医療の現状とあり方】、後編では、【高齢者施設における終末期ケアの対応】について、社団法人「認知症の人と家族の会」の顧問でもあり、『介護のための老人医療入門』等の著者を出版されている三宅貴夫さんが奥深い自論を展開されているのでご紹介していこう。

認知症介護の知識
 
 
高齢者の終末期医療の現状
~①終末期の基準について合意が形成されていない~
診察   認知症高齢者の終末期ケアでいう「終末期」とは、どのような状態であるかに関して、その基準についての合意が形成されておらず、日本において広く認められた基準がない現状である。
認知症高齢者の終末期ケアもチーム医療として進められるものであり、医療機関や在宅においても終末期の基準に関する合意は欠かせない。

また、終末期ケアが医療職のみの支援で行われているとは限らない。終末期ケアには、家族が大いに関与するものであり、さらに医療職が乏しい特養やグループホームなどの介護施設での認知症高齢者の終末期ケアの取り組みが広がっている。

こうした終末期ケアの場にも、医療職、とくに医師や看護師が関わることが少なくないので、終末期の基準に関する合意は欠かせない。

~②高齢者の終末期医療に一定の基準を決めることはできない~

医療技術の進歩によって、高カロリー輸液や中心静脈栄養法、心臓ペースメーカー、血液透析、人工呼吸などの技術が高齢者医療のなかで日常的に使われている。こうした技術が治療というより、高齢者への延命医療として行われていることが少なくない。また、嚥下障害が強くなると経管栄養(主に胃瘻)が容易に導入されている傾向も見受けられる。
こうした人工的な延命医療は人間的ではないと、治療を拒み、嚥下障害があっても可能なかぎり口から食べるような試み、食べられなくても経管栄養を行わず点滴も行わず最期まで看守ろうとする取り組みもあります。

延命医療
 
終末期医療・終末期介護 どちらの医療あるいはケアが望ましいかは、老いや死のとらえ方・考え方、文化的宗教的な背景のなかで一概に決めることはできないと思います。
人工的な延命が無駄で最期まで口から食べることに限るのがより人間的であるとは必ずしも言えないでしょう。
こうした医療やケアにおいて中心は高齢者自身や取り巻く家族です。高齢者の終末期医療に一定の基準を決めることはできないし,すべきではないと思います。
死は個別的なことであり、終末期医療も個別的に決めるのが、あるべき姿ではないだろうか。
 
 
【介護のための老人医療入門】
著者:三宅貴夫
単行本:ソフトカバー(226ページ)
出版社:南山堂
発売日:2000/09

<内容紹介>
医療と介護の連携を目指し、介護の専門職が老人医療をよりよく理解できるよう、臨床医としての経験に基づいて老人医療の基本を分かりやすく解説している。

介護のための老人医療入門―老人の身体と精神と生活の視点からの医療  

  介護のための老人医療入門  
 
 

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