広く社会一般に潜む陰・・・“生活不活発病”
         
  生活不活発病   「生活不活発病」という言葉をご存知でしょうか。
健康状態や加齢、ストレスなどにより毎日の暮らしで体や頭を使う機会が減ることによって、心身の機能が低下する症状を指します。
災害時に避難生活を送る高齢者に多く見受けられ、早急な対策が求められている。

予防には、イキイキとした暮らしが何よりも重要であり、心も体も積極的に使って元気に過ごすことが一番なのだ。

 
 
生活不活発病の背景
生活不活発病が社会的に注目を集めたのは、2004年の新潟県中越地震がきっかけだった。
「地震の前は外をよく歩いたのに、避難所暮らしを続けるうちに歩けなくなった。」「体を動かすのが面倒で気が進まなくなった。」
災害の前は普通に日常生活を送っていたお年寄りらが、避難生活で運動や家事、趣味活動などをする機会が減り、こうした症状を訴える人たちが相次いだ。厚生労働省研究班の調査では、地震前に比べて歩行が困難になった人が37%にも達した。

活発な生活ができなくなると、筋肉や骨、心肺機能が衰えて歩行困難になったり、物事への関心が薄くなり、鬱の傾向が出たりするなど、心身機能が低下する。その結果、寝たきりに繋がる恐れもある。
こうした症状を学術用語では、「廃用症候群」というが、言葉のイメージがきついとして、今は「生活不活発病」と呼ばれている。

廃用症候群=生活不活発病
 
社会一般に起こりうる“生活不活発病”
生活不活発病 災害時にはこうした症状が多くの人に一斉に現れるため注目されやすいが、生活不活発病は実は災害時だけの特殊なものではなく、広く社会一般で起きている。だが、あまり認識されずに見過ごされ、気付いた時には症状が重くなっていることが多い。
「歳のせい」と思いがちな、色々な動作の不自由や「衰えたな」と思うことは、実はこの生活不活発病だというケースが多い。
また「病気のため」と思っていることが、実はこの生活不活発病が加わっていることも考えられる。生活不活発病は防いだり良くしたり出来る病気です。「歳のため」「病気のため」と諦めないことが大事です。

今までは、お年寄りなどが退院後に寝たきりとなり、筋力低下により歩けなくなるなど問題となってきましたが、最近では若年者のパソコンなどの長期使用による筋肉の血液の循環不全や脊椎の変形。運動不足やメタボリック症候群、心臓や肺機能の低下で行動が緩慢になり、運動量の低下。ストレスによる生活不活性化。などお年寄りのみならず幅広い年齢層を脅かす問題になっている。

 
予防対策と周囲の正しい理解が必要

生活不活発病の予防対策をする上で大切な点について、厚労省は「筋肉が落ちたから、筋肉を回復させる」というように個別の症状に対応しようとするのではなく、生活自体を活発に変えていくことを勧めている。自分の身の回りのことや家事、地域の活動に取り組むようになれば、体だけでなく心の面にもよい影響が出てくる。
活動は、回数や時間などの「量」にこだわるのではなく、「質」が重要。車いすに乗れば移動できる距離は長くなるが、介助を受けながらでも、自分で歩くほうが質は高い。
歩行補助器の使い方も工夫が必要だ。「杖が使えなければ車いす」と考えるのではなく、4点で支える杖や、休息したり荷物を収納したりできる機能が付いた手押しの4輪車などを利用することが望ましい。

また、家族や介護スタッフなどの周囲にも正しい理解が求められる。認知症などにも同じことが言えるが「お年寄りだから助けないといけない」と考えるのではなく、家族や施設、地域の中で自分の役割を見つけるのを支援することが、症状の改善に繋がる。

イキイキとした生活を送る
 
痴呆は高齢者だけじゃない!“若年性認知症”Vol.02
「若年性認知症」の理解が広がるきっかけ
●ベストセラー本となった「明日の記憶」
渡辺謙さんが演じるのは、あぶらの乗り切った49歳の広告マン。物忘れに悩まされるようになり、妻の勧めで受診した病院で若年性認知症と診断される。
二人三脚の闘病生活が始まるが、やがて仕事がままならなくなり、会社を辞めざるをえなくなる。専業主婦だった妻は、家計を支えるため働きに出ることに。家に残され、情けなさと外で働く妻の生き生きとした様子に嫉妬して苦しむというストーリーだ。

働き盛りで発症する若年性認知症には、失業や子育てへの障害など高齢者と違った悩みがあり、特に一家の大黒柱の場合は切実で、現役の社会人が病気でリタイアする苦悩は深い。
十数年前、急性骨髄性白血病で銀幕から消えた経験を持つ渡辺さんは、「社会との接点を失うことへの恐怖は良く理解できる。でも、それは人生の終わりではない。この映画が、悩んでいる人や家族の案内役になれば・・・」とメッセージを送っている。

  明日の記憶/渡辺謙  
 
●いつ、誰が発症するか分からない本当に恐ろしい病気
2008年には、大沢幸一県議(桐生市区)が、若年性認知症の症状が進んでいる妻の正子さんとの生活を綴った「妻が“若年認知症”になりました ~限りなき優しさでアルツハイマー病の妻・正子と生きる~」を講談社から出版した。
正子さんは2004年6月、アルツハイマー病と診断され、次第に会話や食事、歩行などが難しくなっていった。
07年5月頃からは、大沢氏が近くにいても、「どこにいるの?」と叫び続けるようになったそうだ。
妻が若年認知性になりました/大沢幸一県議 大沢氏は「家族の病気を隠すのではなく、周囲に理解してもらうことが大切」と考え、06年3月に県議会の一般質問で正子さんの発症を公表している。
今回の著書では、正子さんの症状が進む過程を克明に描くと同時に、認知症に対する知識不足への後悔も織り交ぜながら、体得した介護のコツを紹介している。上述でも紹介した、若年性認知症をテーマにした映画「明日の記憶」を2人で観たエピソードも盛り込んだ。
大沢氏は「認知症は、いつ誰が発症するか分からない本当に恐ろしい病気。まずは私の本を通じて、“これが認知症なんだ”と知ってもらいたい」と話す。

その上で、「正子の負の部分をこの本にまとめ、申し訳ないとも思っている」と時折、涙で声を詰まらせた。
最後に、「どうか多くの方々に読んでいただき、認知症のなんたるかを知っていただくと同時に認知症の介護について参考にしていただければ幸いです」と話した。

   
「若年性認知症」国が支援!相談窓口、センター設置へ
このように、患者や家族の想いがメディアなどを通して社会に伝わるようになり、若年性認知症を支援する家族会も全国で相次いで発足するようになった。
そして、ついに厚生労働省も本年度から若年性認知症の患者支援に乗り出すこととなった。
都道府県ごとに支援ネットワークをつくり、全国150カ所の地域包括支援センターで認知症連携担当者が患者の個別支援を進めるほか、病気や就労などの相談に対応するコールセンターも新設する。
国が総合的な支援に乗り出すのは初めてのことだ。
地域包括支援センター
 
認知症連携担当者 東京都の調査では、患者の約66%が発症後に退職を余儀なくされていることが判明しており、働き手を失うことで家計が行き詰まってしまう事例も珍しくない。同省は、患者や家族が希望すれば必要な情報や公的支援を得られるセーフティーネットづくりを急ぐよう近く都道府県に通知する。

新たな対策は、認知症対策の指針となる7月の緊急プロジェクト報告書をまとめた。医療や介護、障害者雇用などの関係機関が若年性認知症に関するネットワークを都道府県ごとに新設。 患者支援の体制を整える。

さらに、認知症の介護や医療に通じた認知症連携担当者を市町村の地域包括支援センターに配置。認知症サポート医の助言を受けながら、認知症疾患医療センター(全国150カ所)で認知症と診断された患者の希望や症状に応じて障害者雇用や福祉、介護サービスを案内するとのこと。
また仕事を続けられる場合は、本人や企業に対する職場適応援助者(ジョブコーチ)支援など、公的制度の活用を促す。
離職した人には、若年性認知症対応型のデイサービスなどで日中の活動を支援。自宅で生活が難しい人には認知症グループホームなどを紹介する。

若年性認知症
 
近い将来、認知症に対する理解が社会に広がり、「認知症は恥なので隠すという時代」から「認知症を隠すのは恥である」という時代が来ることを願う。
若年性認知症患者と家族が安心して在宅生活を送るには、関係者も家族も若年性認知症の現実問題だけに焦点をあてるのではなく、その持ちうる力を理解し認知症のイメージを変えていく自身の意識改革も必要ではないかと考える。
明日の記憶 妻が「若年認知性」になりました
【明日の記憶】
キャスト:渡辺 謙、樋口 可南子 ほか
監督:堤 幸彦
映画 「明日の記憶」公式サイト
※現在、上映は終了しています。
明日の記憶 [DVD]
【妻が「若年認知症」になりました】
著者:大沢 幸一
単行本:327ページ
出版社:講談社
妻が「若年認知症」になりました - 限りなき優しさでアルツハイマー病の妻・正子と生きる (介護ライブラリー)
 
痴呆は高齢者だけじゃない!“若年性認知症”~Vol.01~
認知性における「高齢者」と「若年性」の相違点
若年者   若年性認知症は、64歳以下で発症した認知症のことを指し、アルツハイマー型や脳出血などの血管性、アルコール関連疾患など原因は多岐にわたる。
その中でも、大脳の前頭葉と側頭葉が部分的に萎縮する「ピック病」が多いのが特徴。

厚労省の調査では、全国の患者数が3万1000~5万2000人と推計され、過去のアンケート調査での推定数より5000~1万4000人増えており、認知症の若年齢化が進んでいることが判明した。

 
  ピック病  
しかし、アルツハイマー病が研究され徐々に治療法も進んでいるのに対し、ピック病は研究が進んでおらず、その原因や治療法も殆ど解明されていない。

年配者の認知症は世間で理解されていますが、若年性認知症はまだ世間の理解を得られておらず、患者もその家族もどうしていいのか分からないという状態で、公的支援が行き届いていない状況も浮かび上がった。

 
※ピック病とは?
アルツハイマー病は記銘力・記憶力低下などの知的機能低下が初発症状であるが、ピック病では、人格変化や情緒障害などが初発症状である。
すなわち、自制力低下(粗暴・相手の話は聞かずに一方的に喋る)、感情鈍麻、異常行動(浪費・過食・異食・何でも口に入れる・窃盗・徘徊)などがあり、人格は変わり(無欲・無関心)、感情の荒廃が高度で、特に対人的態度が特異である。
たとえば人を無視した態度、診察に対して非協力、不真面目な態度、ひねくれた態度、人を馬鹿にした態度などで病識はない。その他、会話中に同じ内容の言葉を繰り返す「滞続言語」(滞続言語とは、特有な反復言語で、質問の内容とは無関係に何を聞いても同じ話を繰り返すもので、他動的に誘発され持続的で制止不能である)も特有である。
 
現役の認識が強い「若年性認知症」
認知症 日時・日常生活の出来事・道順などを忘れ、進行すると徘徊などの行動障害が出るのは高齢者と共通した症状だ。最初は「あれ、何だっけ?」といった一時的な物忘れから始まるが、やがて会議の予定を忘れたり、同僚の名前や取引先の場所がわからなくなったりするため、仕事を続けることができなくなる。根治療法はなく、高齢者よりも進行が早いとも言われている。

また、「高齢者とは異なる介護が必要だが、自分の住む地域でどの施設が受け入れ可能かといった情報を、家族が入手するのは難しい」ことや「若年性の

場合、エネルギーが旺盛で適度に発散させないと、問題行動を引き起こしやすい。自分は現役だという意識も強く、押しつけられる介護を嫌う」などといった問題点も浮かび上がっている。その他にも、専用の介護サービスはないため高齢者用の施設を利用することになるが、「力が強く介護が難しい」と受け入れを拒否されるケースも少なくないという。
 
「若年性認知症」の実態調査に動き出す市区町村
各地の市区町村で実態調査が取りまとめられ、発症当時働いていた人は失職し、約半数の家庭が退職金や貯金を切り崩して生活している厳しい現実が明らかになった。

家族への聞き取りでは、「職場から仕事を辞めるように言われ、社宅も出なければならなくなった。どうしたら生活できるのかわからなかった」
また、 「若いので体力があるため遠くまで徘徊され、タクシーで帰らざるをえなかった。経済的負担が大きかった」などと深刻な相談が寄せられた。

若年性認知症
 
若年性認知症 夫は仕事一筋で穏やかな性格だったが、約4年前から家族を殴り、怒鳴り散らすようになった。仕事も辞めざるをえず、「どこに相談すればよいかも分からなかった」という。
また、当事者への聞き取りも行われた。
50歳代の男性は営業をしていた頃、地下鉄の乗り方がわからなくなり、アルツハイマー病と診断された。「無収入でせつない。道が閉ざされた感じがする。もう俺の人生終わりなのか」と切実な声を寄せた。

そんな働き盛りを襲う進行型の脳の病に、患者本人

はもとより家族の精神的ショックは計り知れない。経済的にも社会的にも孤立しがちな患者や家族にとって、情報交換や日頃のストレスを発散できる家族会が全国各地で発足されている。これまで閉ざされていた過去やその過程を打ち明け、「私もそうだった」など同じ悩みを持ち苦しんでいた人の声やアドバイスに、多くの人が「私は1人じゃないんだ」と孤立離れし、大きな救いや支えとなっている。