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| 携帯電話の向こうに話しかける男性(47歳)の声が弾んだ。「名前を呼んで手を振ってくれるおばあちゃんがおるねん。」 2月24日。男性は、この日から大阪府八尾市の老人介護施設で働き始めた。職場で感じた喜びを、誰よりも妻に聞いてほしいと、休憩時間に電話をかけたのだ。帰宅するまでは、とても待てなかった。 福祉職場で働くのは初めて。不安は大きかった。それだけに、自分を受け入れてくれた小さな出来事が嬉しかった。何よりも、手探りの中で踏み出した暗い足元に、ぼんやりとだが光が差し込んだ気がした。 |
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| 「来月から給料は時給制。1時間850円や。」2か月前、男性は5年間勤めた小さな金属加工会社の上司から、そう告げられた。手取りは半減し、月15万円にしかならない。 プレス機で精密機械の部品を作る。わずかな誤差を許されない神経を使う立ち仕事だ。納期に追われ、日付が変わるまで働いたことも度々あったが、不平一つ言ったことはない。それを・・・。 2年半前に結婚した妻と、10ヶ月の娘のことが頭をよぎる。不安と怒りに震え、反論する言葉も出なかった。 だが、その夜、妻は意外な言葉をかけてくれた。「社員を大切にしないそんな会社は辞めて、やりたい仕事をやったらいいやん。」 やりたい仕事・・・。 男性の思いを、妻は、何となく気づいているようだった。 |
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「おむつ交換してたらうんちがついて大変やったわ。」「末期がんのおばあちゃんが、ホットケーキ食べたいって言うから焼いてあげたら、涙流して喜んでくれはった。」 最初は、相槌を打って聞き流すだけだったが、いつも笑顔でやりがいを語る妻の言葉に、いつの間にか引き込まれるようになっていたのだ。 そうは言っても、それで家族を養えるのか・・・。翌日も会社に顔を出した。だが、そこで、「仕事はないから、帰ってくれ」と言われて、踏ん切りがついた。 |
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| 2月15日、大阪市鶴見区で開催された『福祉の就職フェア』に家族3人で出掛けた。老人介護施設のブースをのぞくと、担当者は「資格がなくても、やる気があるなら大歓迎です」と言ってくれた。 男性はフェアから5日後に採用が決まった。 「名前と顔を覚えるのが基本中の基本」「しゃべってしゃべって自分を売り込んで、信頼してもらえるよう頑張って」。 初出勤までの4日間、妻から心構えをたたき込まれた。 その教えが、初日から役に立ったようだ。 携帯電話の向こうで、妻の声も弾んでいた。「パパが、こんなに嬉しそうに仕事の話をするのを聞いたのは本当に久しぶりやわ。」 以上、読売新聞 2009年3月10日 原文のまま抜粋 |
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今年度の就職フェアにもダベリバ編集部は参加してきたが、中高年層の来場が一際目立った。 フェアを企画した大阪府福祉人材センターの統計によると、予想を上回る1,113人が来場している。 今回の男性のように、資格や経験のない中で介護業界での就労を強く希望する方と、未経験者を積極的に採用する施設側とのマッチングは今後、必ず増えてくるだろう。 実質、働きながらヘルパー2級の資格が取得できる「実践型人材養成システム」を活用する施設も増えてきている。 |
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このような人材が職場に定着し、介護のプロとして歩み始めることができれば、本人と施設側はもちろんのこと、業界全体においても大きなプラスになることは間違いないだろう。 今後、採用の門戸を広げる施設と従来通り、有資格者・経験者のみの採用を継続する施設とで、大きく別れるだろうが、どちらの選択を取るにしても、この人手不足と職場定着の問題を打破する為には、戦略に基づいた攻めの採用手法の確立とスタッフが安心して働ける職場環境の整備が必要不可欠になるだろう。 |
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